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横浜地方裁判所 平成2年(ワ)3132号 判決 1992年1月30日

主文

一  被告宗形康は原告に対し、二五万円及びこれに対する平成二年一二月三一日から支払い済みまで、年五分の割合による金員を支払え。

二  被告らは連帯して原告に対し、五万円及びこれに対する平成二年一二月三一日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。

三  原告その余の請求を棄却する。

四  訴訟費用はこれを一〇分しその一を被告らの、その余を原告の各負担とする。

五  原告勝訴部分に限り仮に執行できる。

事実

第一申し立て

一  請求の趣旨

1  被告らは原告に対し、六〇九万三九六円及びこれに対する平成二年一二月三一日から支払い済みまで、年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用被告ら負担

3  仮執行の宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

請求棄却

第二主張

一  請求の原因

1  事故

(一) 日時・昭和六二年一二月一三日午後一二時三〇分ころ

(二) 場所・横浜市神奈川区松見町二の三七五先路上

(三) 態様・停車中の原告運転の普通乗用自動車に被告康運転の普通乗用自動車が追突した。

2  原告の受傷

(一) 病名 頚椎捻挫、頭頚部外傷

(二) 通院 昭和六二年一二月一四日~平成元年九月三〇日(実日数五二日)

(三) 後遺症 肩凝り等 平成元年九月三〇日固定 一四級

3  責任

被告康・民法七〇九条、被告貞彌・自賠法三条

4  損害

(一) 医療費 五六万七二五〇円

(二) 通院費 三万九六〇〇円

(三) 文書費 八〇〇円

(四) 慰謝料 傷害分三八万八八〇〇円、後遺症分七五万円

(五) 雑費 八二〇〇円

(六) 人的損害に対する制裁慰謝料 五八二万五二〇〇円

(七) 車両修理費 五二万三五〇〇円

(八) 物的損害に対する制裁慰謝料 七〇万円

(九) 訴状作成費用 二七万一〇七六円

5  損害の填補 一七五万四六五〇円

4(一)ないし(五)の損害は自賠責保険から支払われた。

二  請求の原因に対する認容

1ないし3、4の(一)ないし(五)、5は認める。その余は争う。

理由

一  請求の原因4(六)ないし(九)の損害について判断する。

1  慰謝料に制裁的要素があることは否定できないけれども、原告が主張するような制裁慰謝料という概念は未だ確立されたものとはいえないから、右(六)及び(八)の請求は失当である。

2  乙一ないし五、原告、弁論の全趣旨によれば、原告車両は本件事故により全損になつたこと、原告車両の時価は多くとも二五万円を超えないこと、原告車両を修理すれば、その費用は時価を上回ることが認められる。これによれば車両損害は二五万円と認めるのが相当である。なお、原告は原告車両で父親を病院に送り迎えし、タイヤや電気系統をグレードアツプしたため、同車に特別の愛着を持つていることが認められるが、未だ右認定を左右するに足りない。

3  原告が本件訴訟を独力で遂行し、多数の書物を購入して勉強し、膨大な書類を作成したことは当裁判所に顕著な事実である。したがつて原告が本件訴訟のために時間的、経済的に相当の負担を余儀なくされたことは推認するに難くなく、これもまた本件事故に基づく損害というを妨げないと思料される。そしてこれを評価すれば一〇万円を上回ると推認されるが(原告)、そのうち、司法書士を依頼して本件訴訟に必要な書類を作成したと仮定した場合に要するであろう費用相当額を(その額は概ね五万円程度であると思われる。)、本件事故と相当因果関係に立つ損害と認めるのが相当である。

二  以上によると、被告らが原告に支払うべき損害額は、被告康において三〇万円、被告貞彌において五万円となる。

(裁判官 清水悠爾)

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